【司法書士が解説】土地の名義変更における必要書類とは?どこで手に入る?
「土地の名義変更」は、不動産を所有する上で避けられない重要な手続きです。ですが、初めて手続きを行う方にとっては、どの書類が必要で、どこで取得できるのかが分かりにくいかもしれません。
この記事では、土地の名義変更に必要な書類やその取得方法、手続きの流れについて、司法書士が詳しく解説いたします。これから名義変更を行う方は、ぜひ参考にしてみてください。
土地の名義変更が必要になるケースとは
土地の名義変更が必要となる代表的なケースは主に3種類あります。
相続
相続が発生した場合、相続人は被相続人の財産を包括的に承継します。この場合、土地も例外ではなく、登記簿上の名義を相続人に変更する必要があります。
たとえば、お父様が亡くなり、遺産として土地を相続する場合。相続が発生した後、その土地の名義をお父様からご自身に変更する必要があります。この場合、民法第896条に基づき、相続人は被相続人の財産を包括的に承継します。名義変更を行わないままにしてしまうと、将来的に土地の売却や担保設定が難しくなるリスクがあります。
売買
土地の売買を行う場合、所有権移転登記を行う義務が生じるため、土地の売買契約が成立した際に所有権移転のための名義変更が必要です。
たとえば、AさんがBさんに土地を売却する場合。売買契約が成立すると、所有権をAさんからBさんに移転するために名義変更が必要になるということです。この手続きを怠ると、第三者がその土地に対して権利を主張することができる状況になりかねません。
贈与
贈与によって土地を他者に譲渡する場合も、所有権移転のための名義変更が必要になります。
たとえば、親が子供に土地を贈与する場合。民法第549条に基づき、贈与契約が成立したら、土地の名義を親から子供に変更する必要があります。贈与税が発生する可能性もあるため、税務面の確認も必要となってきますので贈与に関しては注意が必要です。
名義変更は必ずしなきゃいけないの?
名義変更を行わないと、さまざまなリスクが生じます。
名義変更を怠ると、将来的に不動産の売却や相続人間でのトラブルが発生することがあります。不動産の権利に関する登記が第三者対抗要件として定められていますので、名義変更をしないままでは第三者に対して所有権を主張することができなくなる恐れがあります。
相続人の一人が土地の名義を変更せずに放置していたために、他の相続人が別の相続人に土地の売却を希望した際、名義変更が行われていないために売却が遅れたり、最悪の場合、他の相続人が亡くなってしまい、さらに相続関係が複雑になるというケースは実際にあります。
土地名義変更に必要な主な書類一覧
各手続きに必要な書類
相続
- 遺産分割協議書または遺言書
- 相続関係を証明する戸籍一式
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
売買の場合
- 売買契約書又は登記原因証明情報
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 印鑑証明書(発行3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
贈与の場合
- 贈与契約書又は登記原因証明情報
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 印鑑証明書(発行3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
必要書類の取得方法
1. 遺産分割協議書
作成する必要があります:遺産分割協議書は、相続人全員が協議して作成する書類です。法務局や市区町村役場で取得できるものではありません。
作成方法:相続人全員が遺産の分割方法に合意し、その内容を文書に記載します。全員の署名と実印の押印が必要です。必要に応じて、司法書士や弁護士に作成を依頼することもできます。
2. 遺言書
遺言書には自筆証書遺言書と公正証書遺言書の2種類があります。 自筆証書遺言は遺言書の全文を自筆で作成する必要があり、字が書けない方の場合、作成はできません。 公正証書遺言は、公正証書という形で残される遺言書で、家庭裁判所での検認手続を経る必要がないので、相続の開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。
自筆証書遺言:被相続人が自ら書き残した遺言書で、遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。遺言書が家庭裁判所で検認されると、相続人が手元に保管するか、または家庭裁判所で保管します。
公正証書遺言:公証役場で公証人によって作成された遺言書です。検認手続きは不要で、遺言者の死後、相続人または遺言執行者が公証役場から取得できます。
※遺言書は不備がある場合、無効になってしまうので、記載に内容には細心の注意を払う必要があります。遺言書作成の際は専門家のサポートを受けて作成することをお勧めいたします。
3. 相続関係を証明する戸籍一式
市区町村役場で取得:被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(戸籍抄本、除籍謄本、改製原戸籍を含む)を取得する必要があります。相続人全員の戸籍謄本も必要です。
※被相続人の本籍地が異なる場合、それぞれの市区町村役場から取り寄せる必要があります。窓口申請、郵送申請、あるいは一部オンラインでの取得も可能です。
4. 固定資産評価証明書
市区町村役場の資産税課で取得:不動産が所在する市区町村役場で申請します。固定資産税の課税対象となっている土地や建物の評価額を証明する書類です。不動産の所在地や土地・建物の地番が必要です。
5. 住民票
市区町村役場で取得: 住民票は本人が住んでいる市区町村役場で取得できます。申請時には本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要です。代理人が申請する場合、委任状が必要です。
6. 売買契約書
作成する必要があります: 不動産売買の際に、売主と買主が交わす契約書です。売買の合意内容を記載し、双方が署名・押印することで有効となります。通常、不動産取引業者が間に入る場合は、業者が契約書を作成します。
7. 登記原因証明情報
作成する必要があります: 登記権利者と登記義務者が共同して作成します。不動産の登記を変更する際に、登記原因(売買、相続、贈与など)を証明するための書類です。一般的に、登記申請の専門家である司法書士が登記原因証明情報の作成と登記申請をおこないます。
8. 登記識別情報(登記済権利証)
法務局での発行: 不動産の所有権を登記した際に、法務局から発行される書類です。現在の登記識別情報通知制度では、紙の登記済権利証に代わり、オンラインで登記手続きを行う際に発行される識別情報がこれに該当します。
9. 印鑑証明書(発行3カ月以内)
市区町村役場で取得: 印鑑登録をしている市区町村役場で取得します。取得には実印が必要です。印鑑証明書の有効期間は一般的に発行から3カ月以内ですので、名義変更や登記手続きに使用する場合は、最新のものを取得する必要があります。
10. 贈与契約書
作成する必要があります: 贈与契約を成立させるために作成する書類です。贈与者と受贈者が合意した内容を記載し、双方が署名・押印します。司法書士に依頼して作成することも可能です。
11.登記識別情報(登記済権利証)の取得方法
新規登記または所有権移転登記の際に発行: 登記識別情報は、新しく不動産を取得した際や、所有権移転登記が行われた際に、自動的に法務局から発行されます。これが所有者に通知される形で提供されるため、法務局に改めて申請して取得するものではありません。
※再発行は不可 登記識別情報は、一度通知された後、再発行はできません。紛失した場合、法務局に「事前通知」または「本人確認情報の提供」といった手続きを通じて、登記手続きを進めることができます。
名義変更手続きの流れ
1、必要書類の収集方法
必要書類を収集するには、市区町村役場や法務局で申請を行います。特に、戸籍謄本は本籍地の市区町村でのみ発行されるため、遠方の場合は郵送での請求が必要となることがあります。
2、申請書類の作成と提出
書類が揃ったら、登記申請書を作成し、必要書類とともに法務局に提出します。登記申請書の書式は法務局のホームページからダウンロード可能です。申請書の記載内容や添付書類に不備がないよう注意が必要です。
3、法務局での手続きの流れ
法務局では、提出された書類をもとに審査が行われ、問題がなければ名義変更が承認されます。手続き完了までには数週間を要することがあります。
名義変更にかかる費用について
司法書士に依頼した場合
司法書士に依頼する場合、手続きの複雑さや土地の評価額によって報酬が異なります。報酬は一般的に数万円から数十万円程度ですが、複数の土地が関与する場合や遺産分割が複雑な場合は、さらに高額になることもあります。報酬額については、事前に見積もりを依頼することをお勧めします。
自分で手続きした場合
自分で手続きを行う場合、司法書士への報酬を節約できますが、その分、登記の申請書類の作成や法務局での手続きに時間と労力がかかります。登記の不備が生じた場合、再提出や修正が必要となるため、結果的に手続きが遅れる可能性も生じます。
名義変更における注意点
期限に関する注意点
相続登記に法定の期限はありませんが、相続登記を怠ると将来的に問題が発生する可能性があります。特に、他の相続人が死亡した場合、さらに複雑な相続手続きが必要となるため、早めの手続きをお勧めします。また、土地の売買に関しても、所有権の移転登記を速やかに行わないと、売主が二重譲渡を行うなどのリスクがあります(民法第177条)。
書類不備によるリスク
登記申請書や添付書類に不備があると、登記が拒否されることがあります。特に、相続登記の場合、遺産分割協議書の内容や相続人の範囲に誤りがあると、再度協議や書類の再作成が必要となるため、注意が必要です。
司法書士に依頼するメリット
土地の名義変更は複雑な手続きであり、書類の不備や手続きのミスが命取りになることもあります。しかし、司法書士に頼むことで、代わりに作業を進めてもらえるため、登記の手続に手間がかからなく、速やかに完了ができます。ほとんどの書類は司法書士が代理で集めてくれますし、本人のやることはほとんどなくなります。また、不動産の名義変更等に関する登記申請を代理でするだけでなく、一定の範囲内で相談をすることもできますので、不安を抱えている方普段忙しい方などは司法書士に頼むのも一つの手となります。
当事務所では岸和田・堺・大阪の3拠点で無料相談を実施しております。
当事務所の名義変更にかかる費用
1)相続手続きサポート(対象:不動産+預貯金)
相続手続きサポートとは、この様々な手続き中でも特にメインとなる相続手続きである不動産、預貯金に関する全ての相続手続きをお客様のご希望に応じてお引き受けするサービスです。
相続財産の価額 | サポート料金 |
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500万円以下 | 165,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 220,000円 |
1,000万円超~2,000万円以下 | 264,000円 |
2,000万円超~4,000万円以下 | 308,000円 |
4,000万円超~6,000万円以下 | 352,000円 |
6,000万円超~8,000万円以下 | 396,000円 |
8,000万円超 | 要見積 |
※代表相続人が 1名の場合に限ります。(代表相続人が他の相続人に分配する場合も含みます)
※相続人の戸籍収集は 4名までとなります。 相続税が発生しないお客様が対象となります。
※財産調査は不動産のみ実施します。
※遺産分割協議書に記載する財産は不動産と預貯金に限り、負債やその他の財産は含めません。
※金融機関が 3つ以内の場合に限ります。
※不動産登記 1管轄 5筆まで、戸籍収集 10通までが対象になります。
※上記料金の他に下記のような実費が必要です。
① 登録免許税(法務局に支払う名義変更に必要な 税金です。) 不動産評価額 ×0.4
※市役所から届く「納税通知書」をお持ちいただければ当事務所で試算することが可能です。
② 戸籍謄本等(例: 450 円、 750 円)、登記簿謄本(例: 480 円) 等
下記、該当した場合は、相続手続き丸ごとサポート(遺産整理業務)での対応となります。
・相続人が 5名 以上の手続きが必要な場合 ・各相続人の意向確認を行う必要がある場合
・金融機関が 4つ以上の手続きが必要な場合 ・財産の分配事務を先導する必要がある場合
・不動産登記 2管轄 6筆以上の手続きが必要な場合 ・ 戸籍収集 11通以上 必要な場合
・面識のない相続人、疎遠な相続人がいる場合(例:前妻の子供、兄弟甥姪など)
・海外の相続手続きもしくは海外に相続人がいる場合
・不動産の売却が発生する場合(弊所で手配する場合)
・財産調査や財産目録の作成が必要な場合
3)相続登記サポート
相続登記(不動産の名義変更)の書類収集~法務局の申請まで登記のプロである司法書士にすべてお任せください。
内容 | 詳細 |
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相続人調査 | ・戸籍、住民票等取得(相続登記に必要なものすべて) ・お持ちの戸籍謄本等のチェック ・相続関係精査 ・法定相続分の確定 |
不動産調査 | ・名寄せ調査 ・評価証明取得 ・登記事項証明書取得 |
相続関係説明図作成 | 法務局提出用の「相続関係説明図」作成 |
遺産分割協議書作成 | ・遺産分割協議書作成(各相続人への郵送も対応します。) |
相続登記申請 | ・法務局へ相続登記の申請 |
アフターフォロー | ・二次相続や生前対策等のサポートをさせていただきます。(相談無料) |
料金 | 110,000円~ |
※上記料金は被相続人1名、相続人4名、不動産登記1管轄5筆、戸籍収集10通までの料金です。
※追加費用の目安:数次相続22,000円/名、被相続人33,000円/名 相続人4,400円/名、不動産33,000円/管轄 2,200円/筆、戸籍等取得3,300円/通
※上記料金の他に下記のような実費が必要です。
①登録免許税(法務局に支払う名義変更に必要な税金です。)
不動産評価額×0.4%
②戸籍謄本等(例:450円・750円)、登記簿謄本(例:480円) 等
2024年4月から相続登記の義務化が開始!詳細はこちら>>当事務所では無料相談を受け付けております。岸和田・堺・大阪の3拠点で相続に強い司法書士が手続きのお手伝いをさせていただきます。まずは、お問い合わせください。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。