メルマガ 所有する不動産がすべて分かる!所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)
所有する不動産がすべて分かる!所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)
皆さま、こんにちは!
堺事務所の司法書士・行政書士江邉慶子です。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続登記に関するご相談が増えましたが、「当時、相続登記をしたが、不動産漏れがあった!」というケースをよく耳にするようになりました。
せっかく相続登記をしても、不動産漏れがあれば、再度、遺産分割協議書を作成し直す必要があり、とっても大変です…。
現状の不動産調査としては、全国的に一括して不動産を調査できる方法は無く、市区町村ごとの名寄帳や固定資産税納税通知書、権利証の確認が必要で、全ての不動産を漏れなく把握することが困難です。これが相続登記漏れや所有者不明土地の増加につながっていました。
こうした事情から、「所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)」が新設されることになりました。
「所有不動産記録証明制度」とは?
法務局に手数料を支払うことで、特定の名義人が所有する全国の不動産登記内容を一括で証明した「所有不動産記録証明書」を取得できる制度です。被相続人(亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。
制度が利用できるのは、不動産の名義人本人、名義人の相続人、名義人の法定代理人、名義人や相続人から委任を受けた代理人(司法書士など)です。
どんな時に利用すると良い?
想定される利用シーンをいくつかご紹介します。
・事例1:相続手続きにおける不動産調査
太郎さんは、父親が亡くなり相続手続きを行うことになりました。 しかし、父親からはどんな不動産を所有していたか聞いておらず、手がかりは山のようにある不動産関係の書類ですが、どこを見て良いか分かりません。 そこで、所有不動産記録証明制度を利用して、父親名義の不動産を法務局で調査しました。 その結果、大阪府の自宅の土地建物が父親名義であることと、北海道の土地1筆が父親名義であることが判明し、スムーズに相続登記の手続きを進めることができました。
・事例2:遺言書作成における財産確認
花子さんは、将来の相続対策として遺言書の作成を検討しています。 所有不動産記録証明制度を利用して、自身が所有する不動産を全てリストアップしました。 その結果、自分が思っていた以上に多くの不動産を所有していることに気づき、遺言書の内容を検討する上で貴重な情報を得ることができました。
・事例3:不動産売買における所有権確認
不動産会社で働く次郎さんは、顧客から土地の売却依頼を受けました。 しかし、土地の権利証が見つからず、境界線も曖昧なため、売買手続きが難航していました。 そこで、所有不動産記録証明制度を利用して、売主名義の不動産を調査したところ、売却対象の土地以外にも、隣接する土地を所有していることが判明し、不動産の漏れなく、無事に売買契約を締結することができました。
これらの事例はあくまで想定であり、制度の運用開始後に実際にどのような事例が出てくるかは未知数です。 しかし、所有不動産記録証明制度は、相続手続き、遺言書作成、生前対策、不動産取引、企業の資産管理など、様々な場面で活用が期待される制度と言えるでしょう。
「所有不動産記録証明制度」のデメリットとは?
現時点で考えられるデメリットとしては、次のようなものがあります。
・氏名・住所の不一致
証明書の請求には、登記簿に記録されている氏名と住所が必要となります。結婚や転居などで氏名や住所が変更された場合、その情報が登記簿に反映されていないと、検索に引っかからない不動産が出てくる可能性があります。
(この問題を解消するため、令和8年4月1日からは住所変更登記が義務化されます。 これにより、登記簿の情報が最新の状態に保たれ、所有不動産記録証明制度の精度向上が期待されます。)
・未登記建物の存在
未登記建物は、所有不動産記録証明制度では把握できません。 そのため、未登記建物の存在を把握するためには、従来の方法(名寄帳取得、納税通知書の確認等)で調査する必要があります。
まとめ
所有不動産記録証明制度は、令和8年2月2日から始まる新しい制度で、特定の名義人が全国で所有する不動産の登記情報を一括で取得できます。これにより、相続登記や不動産取引等を円滑に行うことが可能となります。ただし、登記簿上の氏名や住所が最新でない場合、検索結果に漏れが生じる可能性がある等、注意が必要な点もあります。
この新制度が施行されることで、相続登記漏れは減少すると思いますが、制度がスタートするまでは、相続不動産の調査に限界があるのが現状です。
制度に関する疑問や相続登記等でご不明な点があれば、不動産や登記手続きの専門家であるシーファーストにご相談していただければ幸いです。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。