相続手続きの際に忘れられがちな届出~農地の場合
忘れられがちな相続手続き~農地の場合~
暑さ厳しい日々が続いておりますが、皆様、元気にお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
堺事務所の行政書士、森重聡美です。
さて、今回は「相続手続きの際に忘れられがちな届出~農地の場合」、をお送りします!
平成21年12月15日に施行された農地法の改正に伴い、相続等(遺産分割及び包括遺贈を含む)により農地を取得した場合には、農地を取得したことを知った時点からおおむね10カ月以内に農業委員会への届出が必要になりました。
はて?農業委員会?農業を営んでいらっしゃらない方には特に馴染みの薄い名称かと思います。
農業委員会とは「農業委員会等に関する法律」に基づき、農地に関する事務を行う行政機関です。原則、農地があり一定の農地面積を有している市町村に一つ設置されています。農地法に基づく権利移動の許可、農地転用案件への意見具申など、農地法等の法令に基づく事務、農地等の利用の最適化の推進(担い手への農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進)に関する事務を執行します。
農業委員会についてのイメージを持っていただいたところで、「届出」に話を戻しましょう。
この届出は、農業委員会が農地の権利移動を把握するためのものです(ただし、所有権移転登記(相続登記)に代わるものではありませんので、登記は別途必要です)。届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合には、10万円以下の過料に処せられます。
ここまでに、「届出」「届出」と連呼していますが、この届出のことを「農地法第3条の3第1項の規定による届出」といいます。
似たような言葉に、「農地法3条の許可」「農地法4条の許可」「農地法5条の許可」などもありますが、これらとは全く異なります。
(このあたりから、宅地建物取引士の資格試験の勉強の色が強くなってまいりましたね・・・)
ここでいう「許可」は、例えば、売買や贈与にともなう権利移転をする場合に農業委員会の「許可」がなければ法律上の効果が生じなかったり、農地を農地以外のものにしようとする場合には知事の「許可」が必要、と強い影響力を持ちます。
一方、「相続」は権利をもつ者が積極的に動いた結果ではなく、誰にでも平等かついつ発生するか分からない人生の終焉に対する結果のため(消極的)、当然のことながら許可制にすることは難しく、農地を相続した者からの届出を求められるのです。
そして、この「農地法第3条の3第1項の規定による届出」は、届出であるがゆえに「忘れられがち」です。
相続登記は、昨今の法務省の梃入れによって「やらねばならない」と一般の方にも気運が高まっていますが、農地を相続した方に「さらに届出が必要」とまでなかなか確知されていないのが実情のようです。
また、相続登記は司法書士業務、許可・届出は行政書士業務と別れていることも、原因のひとつかもしれません。
その点、C-firstには司法書士、行政書士が在籍しておりますのでワンストップでお手伝いすることが可能です。
何かと手続きが広範囲・煩雑になりがちな相続については、是非私どもC-firstにご相談ください。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
江邉 慶子
- 保有資格
司法書士 相続アドバイザー 2級FP技能士 行政書士 宅建士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 家族信託
- 経歴
大学卒業後、不動産会社に勤務。自身の祖父の相続経験から「相続争いになる人を減らしたい」という想いがあり司法書士試験にチャレンジし、合格。平成27年7月から「司法書士法人C-first」に入所。入所時から相続を担当し、相談件数400件以上。セミナー講師も務め、生前対策の大切さを伝える。