お隣から伸びて来た木の枝を自分で伐採可能に!
今回は民法改正によって隣地から伸びて来た木の枝を自分で切る事ができるようになったというお話です。
例えば、Aさんの隣Bさんの家が空き家。ここ最近隣のBさんが亡くなり、空き家になっている様子。そして、そのBさんのお子さんも遠方に住んでおり、お家の管理が行き届いておらず、庭木の枝が越境してしまっている。
こういう場合は、改正前の民法(令和5年3月31日以前)ではAさんは、Bさんの相続人に越境した枝を切りとるようにお願いし、それでも切ってもらえない場合は、Bさんの相続人を相手に訴訟を起こして、強制執行により切除する方法しかありませんでした。
枝を切るためにわざわざ裁判までしなければならないの?と思いますよね。
最近よく耳にする所有者不明土地問題や空き家問題によりこういった事例は増えています。そのため、民法が改正され、令和5年4月1日から施行されました。以下、改正後の対応方法を簡単にまとめました。
対応方法
原則は、隣地の竹木所有者が切り取る必要がありますが、以下の場合はご自身で切り取ることができます。①から③の順番で対応するといいでしょう。
① 急迫の事情がある場合
例えば、道路に枝が越境し、信号機が見えづらく、交通事故が起こるかもしれないときや、台風などの自然災害によって木の枝が折れ、家屋が毀損するおそれがある場合など。
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次に、急迫の事情がない場合、まず所有者を探しましょう。
(現況調査、不動産登記簿や住民票等を確認し、調査をする必要があります。)
② 調査をして、所有者が判明した場合
→所有者に対して切除するよう催告する。催告期間は2週間程度で十分でしょう。
口頭による催告も法律上有効ですが、確実を期すためには証拠力の強い方法(内容証明郵便など)によるのが望ましいでしょう。
※内容証明郵便については、こちらをご参照ください。
→催告期間内に、所有者が対応してくれない場合は、ご自身で切除可能です。
③ 調査をしても所有者が不明又は所有者がどこに住んでいるか不明の場合
→ご自身で切除可能。
Q&A
Q枝を切り取った費用はその所有者に請求できるの?
→可能。
竹木の所有者が伐採すべきであるのに代わりに伐採したことと、越境により土地利用に支障を生じさせた(損害賠償請求権が発生)ことを鑑みると請求は可能。
Q伐採の際、隣地に立ち入ることはできるの?
伐採のために必要な範囲内で可能。(改正民法209条)ただし、隣地が住居の場合は、立ち入る前に居住者の承諾が必要です。
以上、改正民法についてでした。ご近所の方々に迷惑をかけないために、所有している土地建物について所有者がわかるようにするため相続登記を行い、庭木などを適切に管理しておく必要がありますね。
所有している土地や建物の相続登記を長年行っていない方は、ぜひ当法人へご相談ください。
(参考)
改正前民法233条
1、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
改正後民法233条
1、⼟地の所有者は、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
2、前項の場合において⽵⽊が数⼈の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3、第1項の場合において、次に掲げるときは、⼟地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
⼀ ⽵⽊の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、⽵⽊の所有者が相当の
期間内に切除しないとき。
⼆ ⽵⽊の所有者を知ることができず、⼜はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。