凍結された口座から引き出す方法
今月の豆知識
銀行口座の名義人が亡くなったり認知症になった事を銀行が知ると口座が凍結されてしまいます。
こうなるとたとえ家族であっても引き出すことができません。
凍結された口座を解約するには相続であれば全員で遺産分割協議をして相続手続きをする、認知症であれば成年後見人制度を利用するのが一般的ですが、それ以外にもお金を引き出す方法があります。
今回は口座凍結にまつわるお役立ち情報をお届けします。
凍結前や凍結後にお金を引き出す方法はありますが、
後に相続人同士でトラブルになったり、相続放棄の手続きに影響する場合があるので注意が必要です。
正しい知識でトラブルを防止!
口座凍結のタイミング
銀行が口座を凍結するタイミングは名義人死亡でも認知症発症でも「銀行がそれを知った時」です。
多くの場合は相続人などが金融機関へ連絡することで死亡又は認知症を知り、凍結します。
認知症の場合は本人とのやり取りで認知症だと判断された場合に凍結される事もあります。
凍結されるまでに引き出す時の注意点
死亡や認知症発症から凍結されるまでの間に預金を引き出すことは可能です。
犯罪でも横領でもありません。
しかしこれには注意が必要です。
名義人が死亡の場合
他の相続人と揉める原因になる
口座名義人が死亡した時点で預金は相続財産となります。
みんなで分ける物を1人で勝手に多額の預金を引き出したり、引き出したことを隠していたら疑心暗鬼になってしまいますよね。
そうならないためにもお金を引き出す必要があるときは以下の4つを守るのがオススメです。
・引き出す前に相続人全員に用途と額を伝えて了承を得る
・引出した額を通帳記帳する
・使った時の領収書を残す
・自分の相続分を超えて引き出さない
これらをしっかりと守る事で預金引き出しのトラブルは殆ど防ぐことができます。
相続放棄できなくなるかもしれない
預金を引き出す事で相続放棄が出来なくなる可能性があります。
葬儀費用、墓地墓石費用、治療費等に関しては、「身分相応の、当然営まれるべき程度の葬儀費用」等なら、相続財産から支払っても相続放棄できますが、自分で使うために引き出すと財産を相続した事になるので相続放棄できなくなる可能性があります。
相続放棄できなくなってしまうと、故人の財産に負債があればその支払い義務を負う事になります。
名義人が認知症の場合
親族と揉める原因になる
認知症発症後から凍結されるまでの間に限らないのですが、親の財産を管理していると親の為だけに使っているのかどうかというのが非常にわかりづらくなります。
そうすると使い込みを疑われる事もあるかもしれませんし、その場合の潔白を証明するのは非常に困難です。
認知症が発症すれば速やかに成年後見人制度を利用して後見人が財産を管理するのが適切だと言えます。
凍結された口座から引き出す方法
凍結された後でも条件を満たせば引き出すことができます。
名義人が死亡の場合
相続人全員の同意書を提出する
相続人全員の同意を得られれば預金を引き出せます。
しかし、必要書類が多く、相続手続きをして口座を解約する手間と大差ありません。
払戻制度を使う
葬儀費用や生活費等のためにお金を引き出すことができます。
必要書類が多い事に変わりはないですが、1人で手続き出来るメリットがあります。
銀行で手続きを進める場合は上限額があります。
(「相続開始時の口座貯金額 × 1/3 × 相続人の法定相続分」※最大150万円まで)
また、家庭裁判所で手続きする場合は家庭裁判所が認めた額まで引き出せます。
名義人が認知症の場合
認知症の場合は凍結中に引き出す方法はありません。
成年後見人制度を利用して凍結を解除する必要があります。
凍結解除の方法
口座名義人死亡の場合
相続手続き
相続手続きとして口座解約の手続きをする事ができます。
口座名義人が認知症の場合
成年後見人制度の利用
成年後見人制度を利用すれば後見人が口座を管理し引き出すことができます。
まとめ
凍結前に預金を引き出す事は可能ですがその後の手続きを考えるとメリットはそれほどありません。
またこの事で他の相続人や親族と争うきっかけになってしまうかもしれません。
引き出す前には他の相続人や関係する親族にそのことを伝えて、使った後は領収書を保管しておくことでトラブルの防止になります。
死亡による凍結後には払戻制度を使って預金を引き出すことが出来ますが、その手続きは相続手続きと同じぐらい煩雑です。
しかし、ほかの相続人の同意が得られないのであればこの方法しかありません。
認知症による凍結後は事前の対策がなければ成年後見人制度を使う以外方法はありません。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
行政書士
丸谷春稀
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
相続 遺言 家族信託 成年後見
- 経歴
立命館大学経営学部を卒業後、令和3年度行政書士試験に合格。翌年7月行政書士登録。家では年の離れた妹の面倒を見るイクメンの兄。