任意後見のススメ ~備えて安心~
今月の豆知識
認知症を発症すると、自由に不動産の売買をしたり、預貯金の出し入れをすることが難しくなります。
超高齢社会が続くいま、認知症問題はどんどん深刻になっています。そこで今号では、認知症対策の一環として多くの方に利用されている『成年後見制度』について解説いたします。
成年後見制度とは
認知症や障がい等により判断能力が十分でない人のために選任された成年後見人が財産や権利を守る制度。現金・預貯金の管理や不動産の管理、入院や施設入所の手続き等を行います。
どのような時に利用しようと思う?
始めるタイミングで変わる!2種類の成年後見
任意後見
1人でしっかり判断できる内に判断能力低下時に備える
【始めるきっかけ】
・将来、認知症になった時が不安・・・
・夫婦2人暮らしだが、将来に備えて自宅の処分や高齢者施設探しを検討したい
・身近に頼れる親族がいない
本人主体で後見人を選ぶことができる!
法定後見
判断能力がすでに低下してしまっている
【始めるきっかけ】
・親が悪徳商法に騙されて不要な物を買ってしまう
・他の親族が親のお金を使いこんでいる可能性がある
・親が認知症で不動産売却や遺産分割協議ができない
裁判所主体で後見人が選ばれる→7割が専門職!
●任意後見のしくみ
本人が元気なうちに、将来、判断能力が不十分になった時に支援してほしい人をあらかじめ選んでおき、支援内容を決め、任意に契約を行います。
(公証役場で契約の公正証書を作成します。)
本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行い、その選任後、任意後見人による支援が始まります。
※任意後見監督人は、後見人が適正に仕事をしているかチェックします。
誰が任意後見監督人に選ばれる?
⇒原則、弁護士や司法書士等の専門家
●任意後見のメリット
・自分で決めた人が確実に後見人になれる
・契約内容は自由に決めることができる
・居住用不動産でも家庭裁判所の売却許可が不要
法定後見に比べて、自由度が高く自分の意思を反映することができる!
※デメリットとしては、任意後見人には取消権が認められない(本人が行った契約を後見人が取消しできない)ことや任意後見監督人の報酬がかかること等があげられます。
●プラスαで万全の備え
見守り契約・任意代理契約・死後事務委任契約などを任意後見契約に追加することで、より万全に備えることができます。
実際あった!任意後見の具体例2選
1.子どもがいないご夫婦
子どもがおらず、それぞれの兄弟とは疎遠状態。近くに住む姪を頼っている。
2.身寄りがない一人暮らしの方
妻に先立たれ、子どももいない。そろそろ高齢者施設に入居したいと考えている。
必要な備えはその状況によりそれぞれ違います。ご自身の状況に合った必要な契約等をお伝えさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
江邉 慶子
- 保有資格
司法書士 相続アドバイザー 2級FP技能士 行政書士 宅建士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 家族信託
- 経歴
大学卒業後、不動産会社に勤務。自身の祖父の相続経験から「相続争いになる人を減らしたい」という想いがあり司法書士試験にチャレンジし、合格。平成27年7月から「司法書士法人C-first」に入所。入所時から相続を担当し、相談件数400件以上。セミナー講師も務め、生前対策の大切さを伝える。