知らないとヤバイ!負債相続を防ぐ相続放棄!まさかこんなことになるなんて…
皆さんは相続と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。父の預金を相続できる。不動産を相続できる。相続税納めないといけないのかな。等プラスの財産の相続をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
しかし、相続の対象は必ずしもプラスの資産だけとは限りません。借金や未納の税金の支払い義務、連帯保証人の立場、不動産の固定資産税や管理費の支払い義務。このようなマイナスの財産についても相続の対象となります。そのため相続に関する正しい知識や準備ができていないと、自分の作っていない借金に一生悩まされる可能性もあるのです。
今回はこのような負債相続を防ぐための手段である「相続放棄」についてお伝えさせていただきます。 「まさかこんなことになるなんて…」、負債相続を抱えないように、自分を守る知識を身につけましょう。
相続はその相続財産を承継する方法について、三つの選択肢があります。
まず1つ目は、「単純承認」です。これはプラスの財産もマイナスの財産もひっくるめて、すべて丸ごと相続するというものです。相続財産がプラスのもののみの場合、あるいは、負債があっても、それが少額で、明らかにプラスの財産の方が多い場合に選択されます。
2つ目は「相続放棄」です。「相続放棄」とは、プラスの財産の相続もマイナスの財産の相続も同時に放棄する手続きになります。そのため、相続財産は何も受け取ることはできませんが、同時に故人が作った借金の支払い義務からも逃れることができます。
最後の3つ目は「限定承認」です。「単純承認」、「相続放棄」がすべての相続財産を相続するか、すべての相続財産を放棄するかであるのに対して、この「限定承認」はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐという方法です。プラスの財産の中から、負債を弁済し、そのうえで余りがあれば相続できますし、逆にマイナスの財産が多かった場合、超過分の負債を相続する必要はありません。
このように、負債を相続したとしても「相続放棄」、「限定承認」をすれば、故人の借金から逃れることができます。
では、なぜ「相続放棄」、「限定承認」できずに負債相続に苦しむ方がいるのでしょうか?
それは上記で紹介しました、故人の遺した財産を引き継ぐのか、放棄するのかの手続きをする期間が、民法915条1項により、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と限定されているからです。「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、「被相続人死亡の事実を知った時」とされています。
ただ、この三箇月という期限の存在はあまり広く認知されておらず、なんの手続きもしないまま三箇月が経過する方もいらっしゃいます。するとどうなるのでしょうか。…なんと自動的に「単純承認」を選択したことになるのです。もしも故人に莫大な借金があれば、手続きをしなかったために、それらもすべて相続することになります。
また、相続の発生からまだ三箇月以内で「相続放棄」、「限定承認」を検討している場合でも、遺産の全て、または一部を処分している場合は単純承認したものと扱われて、「相続放棄」、「限定承認」の手続きはできなくなります。
つまり、負債相続から身を守るための「相続放棄」や「限定承認」が選択できるのは、相続開始を知った時から三箇月以内、かつ、単純承認とみなされるような行為を行っていない人だけです。(ただし、この三箇月という期間を過ぎた場合の対処法も例外的に存在します。)
この記事をお読みの皆様は、もしご親族の相続が発生した場合、今回ご紹介しました知識を頭に残しつつ、相続の手続きを進めていただきたいと思います。そうすれば、未来の「まさか」を防ぐことができるかもしれません。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。