相続法改正!遺言があっても財産を奪われてしまう事も!
今回は相続法改正のテーマより「民法899条の2、共同相続における権利の承継の対抗要件(相続の効力等に関する見直し)」を取り上げます。
具体例を挙げます。
夫が遺言書で妻に「私の財産は全部妻に相続させる」と書いて死亡しました。夫婦に子供はおらず、亡夫には兄がいるとします。
夫の死亡後、兄は勝手に法定相続分通りに相続登記をして、自分の持分を第三者Aに売却し、売却代金を得ました。(法定相続分の相続登記申請は相続人のうち一人からでも可能です)
持分の買主Aは妻に自分の権利を主張できるでしょうか?
旧制度下での答えは「できません」。
改正前の扱いによると、遺言書の中に「妻に全部相続させる」と書いてありますから、妻は当然にこれを相続物件の買主Aにも主張できていました。何ら登記をしていなくても、妻は「全部自分のものだから、Aが権利を主張するのはおかしい」と主張できます(最判平成14年6月10日)。
一方、令和1年7月1日以後に開始した相続に適用される新法では、登記を備えたAは妻に自分の権利を主張「できる」となります。
改正民法899条の2は「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない」として、相続分の指定や遺産分割方法の指定、いわゆる「相続させる旨の遺言」の場合も含めて登記等の対抗要件を要することとしました。
相続で取得した不動産を売却するケースは多いかと思います。上記で挙げた法定相続分を超える相続分を取得する場合はもちろんのこと、相続登記を早めにしておくことをおすすめします。
同じケースを動画でご紹介!
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。