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住所の記載のない遺言書を用いての相続登記

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登場人物

遺言者

Aさんの夫

 相続人

Aさん(相談者)Aさん(遺言者)の夫のご兄弟

 

相談内容

「夫が亡くなった。自筆証書遺言があるので手続きをしてほしい」とAさんが相談に来られました。 遺言書に封がなかったため確認させていただくと、そこにはAさんに全財産を譲り渡す旨が記載されていました。

 

自筆証書遺言は民法で定められた要件が定められています。遺言書が遺されていたとしても、民法で定められた要件を満たしていないことはしばしばあるのですが、今回Aさんがお持ちになった遺言書は、要件(以下の4点)をきちんと備えていました。

 

1.本人が自筆で全文を書く

2.日付がきちんと書かれている

3.氏名が書かれている

4.押印がある

 

今回のケースは、相続財産の中に不動産があったため、不動産の名義変更(相続登記)が必要になります。

しかしながら、Aさんがお持ちになった遺言書には、亡くなったAさんの夫(遺言者)の住所が記載されていなかったのです。

遺言者の住所が書かれていないことは、遺言書の効力それ自体に問題はないのですが、遺言書を用いての相続登記が法務局に認められるかどうかはまた別のお話です。

 

これはどういうことかというと、法務局は相続登記の申請がされると、遺言者と不動産の所有者が同一人物であることを確認しなければなりません。この確認は、住所と氏名の2点をもって行います。そのため、遺言書に遺言者の住所の記載がなければ、住所の確認が出来ず、氏名のみでは同姓同名の可能性があるため、遺言者と不動産の所有者が同一人物であるという証明が出来ません。

 

そのため、法律上の要件をしっかりと満たした遺言書だったとしても、相続登記には使えない可能性がありました。そのことをお伝えした上で、手続きを開始しました。

 

解決までの流れ

法務局での自筆証書遺言保管制度を利用しない場合、遺言書を用いて相続手続きを進めるには、裁判所での遺言書の検認が必要です。検認とは、相続人等が裁判所に遺言書を提出し、裁判官が開封・確認を行うことです。

そのため、まず私たちは裁判所への遺言書の検認を申立てました。検認を申し立てると、裁判所から相続人全員に検認を行う日(検認期日)が通知されます。

無事に検認を終えることが出来ました。

 

次に法務局と、実際に遺言書を確認していただきながら打合せをし、住所の記載がない遺言書でも相続登記ができるのかどうかを確認しました。

今回のケースでは、遺言書の内容を総合的に判断した結果、遺言書を用いて相続登記が可能であるとの回答を得たので、無事に登記を申請することができました。

 

まとめ 

自筆証書遺言の保管制度も始まり、自筆証書でもいいと思っている方が増えています。 遺言書保管制度を利用すれば、法務局は自筆証書遺言が効力をもつ要件を備えているか、外形的なチェックをしてはくれますが、その先の手続きに使えるかまではチェックしてくれません。その後で手続きができるかどうかは、手続き先の判断です。確実な遺言書を残すのであれば、専門家に相談しながら公正証書遺言を作ることで、余計な心配や疑義が生じることを予防することができます。

この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first

行政書士

鈴木 塁

保有資格

行政書士

専門分野

相続 遺言 生前対策 家族信託

経歴

大学卒業後、東京のホテルに就職し、その後、行政書士法人での勤務を経てc-firstに勤務。元バスケ部でその長身から相続業務をパワフルにこなす。


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