改正後に買戻し特約を抹消したケース
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相続登記サポート
登場人物
被相続人
Aさんの夫
相続人
Aさん
Aさんの子供2名
相談内容
夫が亡くなった。夫のマンションを相続したい。とAさんが相談に来られました。
相続人はAさんと子が二人です。
子供二人はAさんがマンションを相続する事に同意していますので問題なく相続登記の出来る案件です。
ひとつ違うのはこの物件には買戻し特約が登記されている事です。
買戻特約とは、しばらくしてから売主が「あなたに売った物だけどやっぱり返してね。お金は返すね。」と出来る権利です。
不動産の売買契約から一定期間経過後に、売主が売買代金と契約費用を返還して、その不動産を買い戻すことができるという特約になります。
この権利を設定する目的は多くは不動産を販売する業者が、転売や投資転用などを禁止する条件をお客様に守ってもらうためです。
この買戻し特約は売買契約と同時に設定し、最長で10年間の効力があります。
今回はすでに10年経過していたので効力はないのですが、それでも買戻し特約の登記を放置していると大きなデメリットがあります。
買戻し特約を放置するデメリット
それは、買戻特約付き不動産を購入して第三者に売却をしようとしても、買戻特約が付いている状態だと、買主を見つけることが困難という事です。
買戻し特約は誰かに売却しても残ったままとなるため、その不動産を買いたいと思った人がいても、いつか買い戻されるかもしれないリスクがあると買う事はできません。
不動産屋さんに持ち込んでも扱ってくれない場合が殆どです。
そのため絶対ではありませんが出来る時に買戻し特約の抹消登記を行うのが好ましいと言えます。
改正前の買戻し特約の抹消
買戻し特約の抹消は2023年4月1日に改正されました。
改正前は10年経過し、効力がない買戻し特約だったとしても、販売業者の持つ登記識別情報(権利書)や印鑑証明といった重要書類が必要でした。
そのためどんなに古い権利でも販売業者の連絡先を調べ連絡を取って書類のやり取りが必要でした。
販売業者が吸収合併や社名変更などがあれば連絡先を調べるのも一苦労ですし、倒産していれば裁判所で手続きをする必要もありました。
しかし、改正後は10年経過した場合に限り買主単独で抹消登記の申請ができるようになりましたので今回はAさんの協力だけで行う事ができます。
以上の事をAさんにお伝えして相続登記と買戻し特約の抹消手続きをさせて頂く事となりました。
解決までの流れ
改正後の買戻し特約抹消の申請に必要場ものは以下になります。
・買戻特約登記抹消申請書
・土地登記全部事項証明書
・収入印紙1,000円
・委任状
集めるのに苦労する書類は無くスムーズに準備する事ができました。
相続登記についても戸籍謄本集めと遺産分割協議書の作成を行い、法務局に申請し、無事に完了したのでした。
まとめ
買戻し特約を抹消しないまま放置すると売却が難しくなります。
今は売却の予定がなくても自分の子孫や親族がこの問題に直面する可能性があるので出来るだけ早く対処する事がオススメです。
改正後は簡単に手続きが出来るようになったので自分で申請する事も選択肢のひとつだと思います。
わからない事があれば専門家に相談しましょう。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
代表社員
山内 浩
- 保有資格
代表社員司法書士 家族信託専門士
- 専門分野
家族信託 相続 遺言 生前対策
- 経歴
司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。