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突然知らない建物の管理責任を負う事になったケース

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相続財産管理人選任の申立て

登場人物

被相続人
Aさんの父

相続人
Aさん
Bさん

相談内容

「父が亡くなった。相続放棄したが、その不動産の管理義務があると市役所に言われたので相続財産管理人を立てたい。」とAさんが相談にお越しくださいました。

Aさんの父はAさんが幼いころに離婚して、それ以来連絡をとっておらず疎遠状態でした。
父には子供が二人いて一人はAさん、もう一人は異母兄弟のBさんでした。

そしてAさんが父の死を知ったのは父の借金の督促状が届いた時でした。

父が亡くなった事と借金がある事を知ったAさんは相続放棄をするため申述書を裁判所に申述をしました。
死亡から3カ月を超えていたのでその理由を申述書に書き裁判所に提出したところ無事に受理されたのでした。

これで一安心のAさん。
Bさんも相続放棄する事になるのかなと思いましたがそれほど気にしてはいませんでした。

しかしその後、普通に過ごしていたある日の事です。
突然、市役所から納税通知書が届きます。
そこには父が所有する不動産の固定資産税を支払うように書かれていました。


慌てたAさんは市役所に連絡をして担当の人に自分は相続放棄をした事を伝えたのですが市役所の人からはこう言われました。
「他に支払う人や管理する人がいないならAさんに管理義務が残っている。他に相続人がいないのなら相続財産管理人を立ててほしい。」

相続放棄をしたとしても不動産の管理責任はAさんにあると言うのです。

相続放棄をしたのに管理責任

相続放棄すれば不動産を管理する責任からも解放されると思われがちですが実は、2023年3月までは、相続放棄をしても他に相続人がいなければ管理義務を負う事になっていました。

この管理義務から逃れるためには、家庭裁判所へ「相続財産管理人の選任」を申し立てる必要があります。

相続財産管理人とは相続財産の清算を行い、相続財産を引き継ぐ者がいない場合は国に帰属させる役割を担います。
相続財産管理人は家庭裁判所が選び、多くは弁護士が就任します。
その家庭裁判所に相続財産管理人を選んでもらう手続きを「相続財産管理人選任の申立」と言います。

相続財産管理人の選任の申立をするには様々なコストがかかります。
・書類集めや申立てに手間と費用がかかる
・約2ヶ月程度の期間がかかる
・予納金が10万~100万ほどかかる

予納金とは相続財産管理人の報酬や各手続き費用に充てるものです。
プラスの相続財産があればその中から支払われるのですが、相続財産がマイナスであればあらかじめ裁判所に予納金を納めなければなりません。

これらの事をAさんにご説明したところ、お願いしますとのことで受任となりました。

解決までの流れ

相続財産管理人の申立ての前にする事が2つありました。

・Bさんの相続放棄ができているかの確認
・他に相続人がいないかの確認

Bさんが相続放棄をしているかの確認は家庭裁判所で出来ます。
利害関係人であれば他の相続人が相続放棄をしているか否かを照会する事ができますのでAさんに協力して頂きBさんが相続放棄をしている確認を取る事ができました。

次は他に相続人がいないかを調査します。
もし第二順位や第三順位に相続人がいれば管理責任があるのはその相続人になります。
第二順位とは両親や曾祖父母等の事、第三順位とは兄弟姉妹や甥姪等の事です。

第三順位がわかるまでの戸籍を集めて調べた結果、やはり他に相続人はいませんでした。

調査の結果、管理責任を逃れるためにはAさんは相続財産管理人の選任を申し立てるしかありませんでした。

相続財産管理人の選任の申立

相続財産管理人の選任の申立のためにまずは書類集めから取り掛かりました。
必要な書類は申立書の他に戸籍関係や財産目録があります。
戸籍はすでに集め終わっているので、財産目録を作る必要があります。
Aさんの父の土地の書類を役所や法務局に請求し、他に財産がないか調べ、その情報をもとに財産目録を作りました。
それらの書類を揃えて裁判所に提出したところ、無事に相続財産管理人が選任された通知が裁判所から届きましたので、その事をAさんに伝え今回の職務を終えました。

まとめ

今回は法改正前の出来事で、最後に相続放棄をした相続人が不動産の管理義務を負わされるといった事例でした。
このケースはAさんにとってはとばっちりのような物で予防のしようがありません。
しかし、この理不尽にも感じる法律は改正(令和5年4月1日施行)され、管理義務を負うのは最後に放棄した人ではなく、その不動産を占有している相続人とされました。
もし今回の事例が改正後に起きた事であればAさんは管理義務を負う事はなく、裁判所での手続きの手間や予納金の払いを負う事もありませんでした。
予防することのできないトラブルでしたが改正によって今後はこのような事例は少なくなると思います。

この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first

司法書士

江邉 慶子

保有資格

司法書士 相続アドバイザー 2級FP技能士 行政書士 宅建士

専門分野

相続 遺言 生前対策 家族信託

経歴

大学卒業後、不動産会社に勤務。自身の祖父の相続経験から「相続争いになる人を減らしたい」という想いがあり司法書士試験にチャレンジし、合格。平成27年7月から「司法書士法人C-first」に入所。入所時から相続を担当し、相談件数400件以上。セミナー講師も務め、生前対策の大切さを伝える。


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    突然の相続問題に何が必要なのかすらも良くわかっていなかった。

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