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家族信託で相続財産を売却させないケース

ご利用サービス

家族信託サポート

登場人物
Aさん
Aさんの父
Aさんの弟
Aさんの娘

相談内容

「父の遺言書作りを手伝っているが心配事があるので相談したい。」とご相談に来られました。

お話を伺うと父の推定相続人は長男であるAさんとAさんの弟の2名で、弟は現在、父親の自宅に住んでいます。
父は自宅を弟に相続させたいと考えていて、遺言書にもそのように書くつもりでいてAさんもその事には同意しています。
しかし、父には不安がありました。
実は弟には浪費癖があり、もし弟に自宅を相続させれば、すぐに売って現金に変えてしまう可能性があると考えていたのです。

そこでAさんの要望は二つ。一つ目は、父親の自宅を弟に相続させること。二つ目は、弟が自宅を売却するのを防ぐこと。これらを実現したいとのご相談でした。

もし遺言書を使うと一度弟の手に渡った財産は元がどうであれ弟の財産となってしまいます。
その財産をどうするかは弟の自由ですので売却する事を防ぐ事はできません。

そこで私は家族信託を提案しました。
C-firstには家族信託専門士が3名所属し、家族信託に強い事務所である事をお伝えして、家族信託であればAさんと父の要望を全て実現できる事を伝えました。

家族信託の登場人物は次の3人です。
委託者
受託者
受益者

委託者は、自分の財産を信託財産として管理を受託者に託す人です。委託者は自分の財産が自分の望む目的に沿って管理運用されるように受託者と信託契約することができます。
今回は父が委託者で信託財産は父の自宅です。

受託者は、委託者から信託財産の管理を託される人です。その財産を管理し、その財産から生じる利益を受益者に提供する役割を負います。
受託者が管理できるように、信託財産である自宅を父名義から受託者であるA名義に変更します。
今回はAさんが受託者となり父の自宅を管理します。

受益者は、信託財産から利益を受ける権利のある人です。利益と言っても色々ありますが今回は家に住み続ける事が利益となります。
今回は受益者にはまず父がなります。
父が生きている間は問題なく自宅に住み続ける事ができますし、もし仮に父が認知症になったとしても管理はAさんが行うので管理に支障はありません。
父が亡くなったら次は弟が第二受益者になります。
これで弟は家には住み続ける事ができますし、自宅は受託者A名義になっていますので弟は自宅を売却する事はできません。
そして弟が亡くなれば信託は終了し、その時Aさんが生きていればAさんに、Aさんが先に亡くなっていたらAさんの娘が自宅を取得するように信託契約に決めておくことができます。(遺言の代用)


ということで家族信託内容は以下です
・父親を委託者兼受益者とする
・Aさんを受託者とする
・父が亡くなった後は第二受益者を弟にする
・弟が亡くなった後、自宅は、AさんがいればAさんに、いなければAさんの娘の物にする

このように家族信託をご提案したところ、Aさんは即座に同意してくれました。彼は、「それいいですね。自宅は先祖から引き継いだ物なので遺したい。一旦、弟の名義にしたらどうなるかわからないので、すぐにお金に変えちゃうと思う。」と述べ、この提案を快諾してくれたのでした。

解決までの流れ

契約を進めるため、私はまず、施設に入っている父親に面会することを調整しました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、施設側からの面会制限があり会う事ができません。
司法書士が業務を行うには必ず本人の意思を確認する必要があります。
そのため何としても本人に直接お会いして、家族信託を行う意思があるのかをお聞きする必要があります。

施設側に事情を説明し、何とか特例的に面会を実現しました。
そして、面会の中で家族信託の提案を父親に説明し、彼もこれに同意しました。これにより、父親、Aさんともに納得の上で家族信託の契約を締結する事ができました。

その後は自宅の名義を父から受託者A名義に信託登記を行い、無事手続きが完了したのでした。

今回のまとめ

このケースでは、遺言ではなく家族信託を用いることで、父親とAさんの意向を叶えることができました。それにより、弟に自宅を相続させつつも、自宅を勝手に売却することを防ぐことができました。
後にAさんの父はお亡くなりになり、信託契約通りに弟が第二受益者となりました。
その時には小規模宅地の特例が適用され相続税を減税する事もできました。
それぞれの死後の相続も考慮された形で相続手続きも行われました。
新型コロナウイルスの影響の強い時期での案件だったためトラブルも生じましたが無事に手続きを完了できたのでした。

生前対策では誰もが知っている遺言がまず選択肢に入るとは思いますが、他の制度を知らない方も多くいらっしゃいます。
様々な制度を利用して最善の手法を見つけるためにも専門家への相談をオススメします。

この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first

代表社員

山内 浩

保有資格

代表社員司法書士 家族信託専門士

専門分野

家族信託 相続 遺言 生前対策

経歴

司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。


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