遠方の不要な土地を上手に手放したケース
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生前贈与
登場人物
不要な土地の所有者
Aさん
不要な土地の隣に住む人
Bさん
相談内容
「遠方にある土地をBさん(その土地の隣に住む人)に贈与したい」とAさんが相談にこられました。
お話を伺うとAさんは遠方の土地を数十年前に叔父から贈与してもらったのですが不要な土地だったため処分に困っていました。
不要な土地を抱え続ける事が不安でしたし、持ち続けていると息子が相続する事になってしまうので自分が生きているうちに処分したいと考えていました。
この土地は金銭的な負担はなかったもののAさんとしては手放したい気持ちが強かったのです。
早速その土地の事を調べるためにインターネットで登記情報を取得して確認しました。
すると二つの土地ありどちらも地目が畑になっていました。
地目が畑ですとこれは農地になりこれを贈与するには農業委員会の許可を得る必要があります。
土地を管轄する農業委員会と連絡を取り書類を郵送するなどのやり取りをするなどの手続きが必要です。
また土地のひとつには明治時代からの抵当権がついたままになっていました。
この明治時代からほったらかしになっている抵当権は休眠担保と呼ばれ抹消登記の準備が大変です。
休眠担保を抹消するための手続きはいくつかありますが今回は供託をオススメしました。
供託をするためには3つの条件を満たす必要があります。
①抵当権者と連絡が取れない
②弁済期から20年以上経過している
③債権額・利息・損害賠償額の合計にあたる金銭を計算して供託する
これらを解決するためには以下のような方法を取ります
①については抵当権者の所在に郵送で受領催告のお手紙を送る。それで届かず宛所不明で帰って来るので帰って来たらそれを証明書に出来る。
②は登記情報から調べる事ができる
③は金額を計算して供託する必要がある。
これらが出来れば供託証明書を取る事が出来ます。
そして農地の許可と抹消登記の二つを解決した上で契約書を作り贈与を受ける人と贈与契約を結び、贈与登記をする事になります。
以上の手続きの流れを説明した所、「お金はいくらかかっても良いので解決してほしい」とおっしゃって頂いたためご依頼をお受けする事となりました。
解決までの流れ
農地を贈与する許可を取るために農業委員会に連絡を取りました。
一通り事情を説明すると後日、農業員会から連絡があり「その土地は、地目は畑となっているが現状では耕作は行われておらず、さらに荒廃しており雑草が茂っているなどするため非農地の証明が出せる」との事。
非農地の証明があれば贈与できますので願ってもありません。
所が非農地の証明書の申請は郵送では出来ないともので現地まで来て手続きする必要があると言われてしまいました。
郵送で手続きできると思っていたので当てが外れてしまいました。
この土地の所在は極めて遠方のため時間と交通費用が大きな負担になります。
この事をお客様にお話したら「私が行きますよ」と言ってくださったのですが、やはり負担が大きいためお願いするのは躊躇してしまいます。
遠方に向かう段取りを考えながら、休眠担保の抹消の手続きを進めました。
休眠担保の3つの条件を見たすために、まずは抵当権者の所在に郵送で受領催告のお手紙を送りました。
すぐに宛所不明で返送されてきました。これで抵当権者と連絡が取れない証明がとれました。
次に供託金額を計算します。
明治時代に借りたお金の金額は十数円でした。
これを1円も支払っていない事を前提に計算します。
現在の貨幣価値に直す必要はなく、そのままの金額で計算します。
ややこしいのは利息の計算です。
借りてから弁済期までと弁済期から現在まででは利息が違うので計算も違ってくるためまずは弁済期を調べる必要があります。
弁済期はその土地の閉鎖謄本に記載されています。
閉鎖謄本はインターネットで取得できないためその土地を管轄する法務局に郵送で請求します。
届いた閉鎖謄本を見て弁済期を確認して総額を計算した所、300円程度でした。
これで供託する事ができ、供託書を取得する事ができました。
その後、再び農業委員会に問い合わせたら、手続きは郵送で良いと言われたのです。
理由はわかりませんがありがたく郵送で手続きを進めました。
これで二つの問題が解決したのでAさんからBさんに再度連絡を取ってもらい、贈与契約書にサインして頂く事ができました。
そしてこれまで集めた書類をもとに登記申請書を作成し、無事に抹消の登記をする事ができたのでした。
まとめ
土地を貰う時は登記情報などをしっかりと確認してどういう土地なのかをきちんと把握しましょう。
相続であれば地目が何であれ許可は不要だが贈与は偶然突発的に起きる相続と違って自分の意志で行うため農業委員会の許可が必要です。
今回の様に不要な土地を手放したいというのは良くある悩みで、その土地が農地や山林など許可や届出が必要な場合も多いです。
山林などは貰い手が見つからずに困るどうしようもない場合もあります。
今回はたまたまBさんが貰うと言ってくれたので好運でした。
お客様は不要な土地を手放す事ができて安心した様子で、Bさんも自分の家の隣地があき地のまま荒廃していく様が気になっていたようで、今回の事で安心した様子でした。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
山﨑 聡
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士 宅建
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 成年後見
- 経歴
若くして、すでに業界歴11年を超える大ベテラン。相続をはじめ成年後見、遺言などあらゆる手続きに精通する生前対策のスペシャリスト。