相続義務化を見据えて相続登記をしたケース
ご利用サービス
相続手続きサポート
登場人物
被相続人
Aさんの父
相続人
Aさんの母
Aさん
Aさんの兄
Aさんの妹
相談内容
「十数年前に父が他界して不動産の登記をしていない。来年に相続義務化があると知ったのでどうすべきなのか相談したい。」とAさんが相談に来られました。
相続人はAさんの母、Aさんの兄、Aさん本人、Aさんの妹の4人で、相続不動産の土地と建物には母が今も住んでいました。
Aさんは母の近くにお住まいでしたが、兄と妹は別々の遠方で暮らしています。
十数年前に父を亡くし、相続登記をしないままでしたが、相続義務化の事を知り、シーファースト相続相談窓口を訪れてくださったのでした。
相続登記義務化とは
2024年4月1日に相続登記が義務化されます。
相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となってしまいます。
相続登記をせずに放置していると過料が課せられる可能性があるのです。
これまでは相続登記を行わなくても罰則が課せられることはありませんでした。
そのため相続登記には手間も費用もかかるという事もあり、手続きをせずに放置する方は少なくありません。
しかし、相続登記をしない事で誰の土地か特定できなくなってしまい、誰の物かわからない土地では買取りや有効利用する提案をする事もできないため、塩漬けにされた土地がどんどん増えて問題になっているのです。
この問題の解決策として相続登記義務化が始まろうとしています。
この法律は法改正以前に所有している不動産についても適用されますので、Aさんのお父さんの土地と建物についても、もちろん適用される事になります。
不動産の分け方
そういった理由で相続登記を決意したAさんと相続人の方々。
不動産の分け方は「母が住んでいるのだから母に相続させたい」という事で全員のお考えは一致していました。
しかしこれにはデメリットがあります。
母が不動産を相続してしまうと、将来、母がお亡くなりになった時に母から子供たちへ相続登記をする必要が出てきます。
相続登記には手続きに手間がかかるという事もありますが、登録免許税という税金も発生します。
しかし、今回の手続きで子供たちの名義にしてしまえば、将来発生するであろう母から子への相続登記を省ける事になります。
相続登記の流れ
今回は複雑な相続関係ではないため流れもごく一般的な物になります。
必要な書類と集め方をざっくりと紹介しますと以下になります。
・登記申請書の作成
・遺産分割協議書に全員が実印を押印
・必要な戸籍謄本や住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書を各市町村役場に取り寄せる
これらの事をお話させて頂き、「やはり家は母に相続させたい。手続きをお願いします。」との事でしたのでご依頼をお受けいたしました。
解決までの流れ
相談に来られた際にAさんが納税通知書をお持ち下さったのでコピーを頂いていました。
そこに記載されている不動産を調べていた時の事です。
市町村役場に名寄帳を請求して内容を見てみるとその中に一筆見知らぬ土地が載っていたのでした。
所有者は父ですのでこれも相続財産になります。
登記情報を見てみると見知らぬ6人の共有でそのうちの一人が父でした。
Aさんに訊ねてみると土地にも共有者にも心当たりがないとの事でした。
そこで私たちは「14条地図」を取ってみる事にしました。
この地図は法務局で取得できる「地図」で方位、形状、縮尺が正確で信用のおける図面です。
この地図で土地の形を見てみるとどうやら家の目の前にある道路のようでした。
また持分割合は全員が6分の1で父を含め6人で共有していました。これはこの道路に隣接する家屋の件数とも一致していました。
Aさんに地図をみて貰うと「これは確かにウチの前の道路ですね」という事で道路である事が発覚しました。
この土地についてもAさんの父の持分6分の1は母に相続登記をしなければなりません。
予期せぬ土地が一筆増えたので登記申請に必要な税金「登録免許税」が余分にかかる所なのですが、幸いなことに去年の4月に法改正がありました。
これは「相続登記の登録免許税の免税措置」として土地の価格が100万円以下であれば非課税になるといった改正です。
改正前は田舎の土地などに限定されていましたが、この改正によって100万円以下の土地であればOKとなりましたので今回の共有道路もこの法律の恩恵を受ける事ができました。
申請書と遺産分割協議書にこの土地を書き足し、相続人全員に押印頂きました。
それを他の必要書類と綴り法務局に提出し、無事に不動産を母の名義にする申請を完了したのでした。
まとめ
今回の相続関係は複雑ではないものの相続人の2人は遠方でした。
遠方であると郵送でやり取りするほかない書類もありますので時間がかかってしまう場合もあるのですが、今回は相続人同士の関係が良好で母とAさんが近場に居て下さったお陰で書類のやり取りが非常にスムーズでした。
必要な書類を郵送しなければならない場合であってもAさんが「近くなので取りに行きますね」と言ってくださりスムーズに書類が準備できた事もありました。
遠方に相続人がいても相続人同士の関係が良好であれば近くに窓口になる1人がいてくださるだけでもスムーズに事が運ぶと実感できたのでした。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
山﨑 聡
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士 宅建
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 成年後見
- 経歴
若くして、すでに業界歴11年を超える大ベテラン。相続をはじめ成年後見、遺言などあらゆる手続きに精通する生前対策のスペシャリスト。