相続人に帰化した人としてない人がいる場合の相続登記を行ったケース
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相続手続きサポート登場人物
登場人物
相談者
Aさん
被相続人
Aさんの祖父
相続人
Aさんの祖母
Aさんの父
Aさんの叔父
相談内容
「祖父、父、叔父の3人で共有している土地を自分の所有にしようと手続きを進めていたが行き詰まったので一部分をお願いしたい」とAさんが相談にこられました。
お話を伺うとAさんの父、叔父は韓国籍で現在は帰化されていて、祖父と祖母は現在も韓国籍でいらっしゃいました。
一家代々と自営業をなさっており事業は祖父から父、父からAさんへと受け継がれてきました。
祖父が亡くなったのは数年前ですがこの時は土地の相続には取り掛かっていませんでした。
そして今回、事業計画の上で土地をAさんの名義にする必要がでてきたため手続きが必要になったのでした。
相続人は祖母、父、叔父の3人で、土地は祖父、父、叔父の3人が共有しているという状況です。
必要な3件の登記手続き
この土地をAさんの所有にするには法務局へ以下の3件の登記申請をする必要があります。
1,祖父の持分を父に相続
2,父の持分をAさんに贈与
3,叔父の持分をAさんに贈与
Aさんは相続人ではないため祖父の持分を相続する事はできません。
また父と叔父はご存命なのでAさんに土地を渡すには相続ではなく贈与の登記をする事になります。
そこでまずは祖父の持分を相続人である父が相続し、その後、父と叔父の持分をAさんに贈与するという流れになります。
Aさんはシーファースト相続相談窓口にくるまでに税理士に相談して、最初にご自分で叔父の持分の贈与登記に取り掛かり無事に完了していました。
行き詰まったのは祖父の相続手続きです。
これは私どもの目から見ても複雑な相続案件でした。
相続手続きが複雑になる理由
贈与登記であれば書類集めはそれほど難しくはなく、自分の住む市町村の役場で概ね揃いますが、相続登記に必要な書類集めは大変で、中でも戸籍関係は特に難しい部分です。
日本の戸籍集めだけでも大変ですが、今回はさらに韓国の戸籍にあたる書類を集める必要があるのでより一層大変です。
韓国の戸籍
韓国での戸籍にあたる書類は「家族関係登録簿」と言い以下の5つの証明書からなります。
①家族関係証明書
②基本証明書
③婚姻関係証明書
④入養関係証明書
⑤親養子入養関係証明書
この中で④と⑤は養子関係の書類ですので今回は必要ありません。
必要なのは①~③で以下のようになっています。
① 家族関係証明書
両親、配偶者、親子の関係を証明する書類
②基本証明書
出生、死亡、改名を証明する書類
③婚姻関係証明書
婚姻と離婚の履歴。配偶者である事を証明する書類
そして父、叔父は帰化しており、祖父、祖母は帰化していらっしゃらないとの事でしたので今回必要な戸籍関係の書類は以下になります。
必要な戸籍関係の書類
【日本の役所で集める書類】
・父の帰化から現在までの戸籍
・叔父の帰化から現在までの戸籍
【民団で集める書類】
祖父の「家族関係証明書」「基本証明書」「婚姻関係証明書」「改正前の除籍謄本」
祖母の「家族関係証明書」「基本証明書」「改正前の除籍謄本」
除籍謄本についてですが韓国では、2005年の民法改正により「戸籍」が廃止され、2008年に「家族関係登録簿」になりました。
そのため改正前の除籍謄本も必要になります
そしてこれらの書類はハングル語で記載されていますのでこれら全ての書類に「翻訳文」を付ける必要もあります。
この「家族関係登録簿」はどこで取るのかと言いますと、日本にある韓国大使館又は領事館で取得することになります。そして、ハングルが書かれた家族関係登録簿を見ても、それで祖父の出生から死亡までの戸籍一式が揃っているのかよくわからない場合が多いと思いますので、通常は、亡くなった人の住所地を管轄する「在日本大韓民国民団」にお願いすることになります。
「在日本大韓民国民団」は略して「民団」と呼ばれ、日本に定住する在日韓国人のための社団です。
全国に支店があり亡くなった本人の住所地を管轄する支店に出向く必要があります。
韓国領事館や大使館に直接出向くことができればほぼ1日でそろえることはできるでしょうが、勿論、ハングル文字で書かれたものが交付されますので、そのまま受け取るしかできません。これに対して、民団にお願いすれば、戸籍一式を受け取るまでに1カ月程度かかる場合が多いようですが、きちんと日本語に翻訳して渡してもらうことができるので、手数料は別途かかりますが、安心です。
これらの書類を集め終えるとその他の登記に必要な書類一式を揃えて法務局に申請をします。
そして韓国の書類集めは私ども司法書士だけでは行えないため基本的にはAさんが行うことになります。
と言うのも司法書士は受任した登記案件に関わる戸籍類を代理で取得する権限を持っていますが、これはあくまで日本国内に限っての事です。
そのため日本の戸籍は私どもで取れますが韓国の書類を代理で集める事は出来ません。
私たちがお手伝いできるのはAさんが民団で関係する書類を集め終えてからになる事をお話ししました。その、数か月後、書類を集め終えたと再訪してくださりそこからの手続きをお任せ頂く事になりました。
解決までの流れ
Aさんは民団で取得する書類を集めてから改めてご来所くださいました。
こちらで父、叔父の帰化してからの戸籍を追加取得して、相続登記に必要な戸籍が一式揃ったのですが、チェックをしてみると祖母の書類が足りません。
どうやら民団の担当者が祖母もお亡くなりだと勘違いをしていたらしく必要書類が食い違っているようでした。
Aさんにその旨を伝えすぐに民団の担当者と連絡を取ってもらいました。
この書類の取得にもまた1か月程度の時間がかかる事を覚悟していたのですが、担当者が急いでくださり、2日後には取得する事ができました。
これで戸籍関係の書類は一式揃いましたので他の必要書類と合わせて、法務局に相続登記を申請して無事に完了したのでした。
相続登記が終わった後には父からAさんへの贈与登記が必要なのですが、これはAさんがご自分でなさるということで私たちの案件は完了となりました。
贈与登記に関しては叔父の時にすでに経験済みですので問題なく申請できたことでしょう。
まとめ
今回は帰化した方の相続で韓国と日本のどちらの書類も必要だったケースでした。
司法書士の職権は国内にしか及ばない為、お役に立てない部分もあるのですが、どういう手順で行うべきかを立案しご提案する事はできますので、こういったケースでもお気軽にご相談に来てくださればと思います。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
山﨑 聡
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士 宅建
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 成年後見
- 経歴
若くして、すでに業界歴11年を超える大ベテラン。相続をはじめ成年後見、遺言などあらゆる手続きに精通する生前対策のスペシャリスト。