後見人が代理出来ない利益相反のケース
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登場人物
相談者
Aさん
被相続人
Aさんの父
相続人
Aさん
Bさん(Aさんの母)
相談内容
「3行の銀行口座解約手続きをしているが1行だけどうしてもできない」とAさんがご相談に来られました。
Aさんは父の他界後に銀行口座の解約手続きを進めていました。
相続人はAさんとAさんの母であるBさんの2人だけでした。
AさんはBさん後見人だったのでBさんの代理人としても手続きを行なっていました。
分け方は法定相続分の通りに2分の1ずつとして各銀行と連絡を取りあっていました。
そのうち2行はなんとか解約できたのですが、どうしても1行だけ解約に応じてくれません。
その銀行の話を要約すると「利益相反行為になるのでAさんを代理人として認められない。特別代理人選任の申立てをして欲しい」という事でした。
代理人の利益相反行為
さて「利益相反行為」とは何かというと
今回はAさんとBさんで父の相続財産を分け合う状況ですが、もしAさんの取り分を増やすとBさんの取り分は減ってしまいますし、逆にBさんの取り分を増やすとAさんの取り分は減ってしまいます。
この状態を「利益が相反する」と言い、AさんがBさんの代理をする事は「利益相反行為」となり、これは法律では認められていません。
つまり銀行は「利益相反行為は当行の規約上認められないから応じられない」と言っています。
そこでこの事態を進めるのに必要なのが「特別代理人」です。
特別代理人とは何かというと
家庭裁判所によって特別に選任される代理人で、本来代理となる人が特別な事情によって代理が出来ないために代わりの代理人を選ぶ制度です。
特別代理人は家庭裁判所が事情を確認した上で選んだ代理人ですので利益相反はないためBさんの代理として手続きを進める事ができます。
ではなぜ二つの銀行が手続きに応じたのかと言うと、これは解釈の違いによるかと思います。
今回AさんとBさんは財産を2分の1ずつ分ける事にしました。
これは法律で決められた割合も同じですのでAさんが代理をしたとしてもBさんに不利益がない事は明らかです。
この法律の趣旨からして実質的には問題が起こりえない状況なので2行は解約しても良いと判断したのかと思われます。
しかし、形式的には法律の認めない事をしようとしていますので、「利益相反行為」であることに違いはなく、解約させないという判断をしてもおかしい事ではありません。
こういった事情でAさんは特別代理人選任の申立てが必要になったのでした。
解決までの流れ
Aさんからご依頼いただき早速、特別代理人の申立てに取り掛かりました。
家庭裁判所に申し立てるのですがこの時窓口が二つあります。
「親と子(未成年)が利益相反」の場合と「被後見人のため」の場合で違うのですが今回は「被後見人のため」になるのでBさんの住所地を管轄する家庭裁判所にある後見の窓口へ申立てます。
この時、代理人になって欲しい人を候補者として伝える事が出来ます。
特別代理人の選任申立書には候補者欄があって当事者でなければ誰でも候補に選ぶ事ができます。
しかし、候補者を記載したとしても、家庭裁判所が適任ではないと判断すれば、裁判所が司法書士や弁護士等になります。
今回は手続きでは私どもが特別代理人になるとスムーズなので候補者をシーファーストにして申立てました。
無事に私たちが代理人になる事ができたので口座解約の手続きをする事ができたのでした。
その後、不動産の名義変更の手続きもあったので遺産分割協議書の作成も私どもが代理で行ない。
無事に法務局に名義変更の申請を行い完了する事ができたのでした。
まとめ
今回は法定相続分通りの分け方をしても特別代理人を選任しなくては手続きできないという事例でした。
一見、法律的に問題は起こりえないように思える手続きでも実は法律に触れているという場合がありますので不安な場合は専門家に相談してください。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
山﨑 聡
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士 宅建
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 成年後見
- 経歴
若くして、すでに業界歴11年を超える大ベテラン。相続をはじめ成年後見、遺言などあらゆる手続きに精通する生前対策のスペシャリスト。