相続人全員で話し合って遺言の内容を考えた事例
ご利用いただいたサービス
遺言作成サポート
登場人物
相談者
Aさん
遺言者
Aさん
相続人
Bさん
Cさん
相談内容
Aさんが「遺言書を作りたい」と長男Bさん、次男Cさんと一緒に相談に来てくださいました。
Aさんの長男であるBさんが以前私の開催した遺言書に関するセミナーにお越し頂き、Aさんに遺言書の作成を提案してくださったとの事でした。
お話を伺うとAさんはとにかく家族が揉めないようにしたいという願いがありました。
Aさんは資産家であり大変価値のある収益物件をいくつも所有していました。
資産のほとんどは不動産で、その不動産の管理は高齢のAさんに変わってBさんがしていました。
解決までの流れ
それらのお話を聞いて私がまず気になったのは相続税です。
相続税は対策が必要な税金でこれが揉める原因になることがあります。
今回の様に資産の多くを不動産が占める場合、相続税を支払うために不動産を売却しなくてはならない事態になる事もあります。
聞いた限りのAさんの財産だけでも課税額はかなりの高額になる事が予想されますのでいち早く総額を把握し対策を考える必要があります。
Aさんから財産の事を詳しく教えて頂き早速税理士に相続税を試算してもらうようにお願いしました。
そして遺言の内容に関してはご家族3人で話し合いをして考えて頂く事にしました。
と言いますのも1番揉めない遺言書とは全員が納得をした遺言書です。
今回の場合ですと遺言者はAさん、相続人は息子のBさんとCさんの2人で3人ともが揉めないようにしたいとの考えが共通していました。
であれば3人が納得する内容にして頂いてから公正証書にするのが最善だと考えたためです。
遺言書作成時、兄弟の一人が付き添って、別の兄弟は遺言書の存在すら知らないという事がありますが、今回の様に相続人全員で話し合える環境こそが最善だと考えています。
そして後日、相続税の試算も出たので3人+私の4人で円卓を囲み、相続税の金額を元に税理士から税金対策のアドバイスを貰い、法的な内容のアドバイスについては私が担当させて頂き、具体的な内容は3人で話し合って頂きました。
話はスムーズに進み内容が決まった事で私から3つの注意点をご説明させて頂きました。
①共有不動産で揉めるリスク
不動産を法定相続分で分ければ、平等で手続きもスムーズですが後に争いになる事があります。
例えば後に売却や建て替えなどを行なう時には2人の意見が一致しなければ進める事ができなくなってしまいます。
兄弟仲が良くても一方がお亡くなりになり甥姪が持分を相続すると事態が変わる可能性もあります。
②予備的遺言について
予備的遺言とは「もしAさんより先にBさんが亡くなった場合は~~」というようなもしもの場合に備えた内容を書き加える事です。
予備的遺言がないままAさんより先にどちらかが亡くなってしまうと、亡くなった方が取得するはずだった財産は、遺産分割の対象になります。そして、亡くなった方にお子様がいれば、その方を含めて、遺産分割協議をする必要があります。せっかく遺言を作ったのに、結局遺産分割をすることになってしまい、そこで揉めてしまうリスクもあります。
この説明をしたところ「その辺まで何があるかわからないので決めておかないといけないですね」と納得して頂き追加する事となりました。
③遺言執行者について
遺言書の内容を実際に手続きする人を遺言執行者と言い、遺言書で定めておけます。
Bさんに執行者になって頂き、万が一Bさんが先に亡くなった場合はCさんが執行者になるとしました。
お二人にどんな義務があってどんな仕事をしないといけないかを説明させて頂きました。
そしてこの話し合いの内容を元に公正証書の案文を作成し、Aさん達に確認をして頂きOKを頂きました。
そして後日、公正証書として作成するために公証役場に来ていただき当法人が準備した2人の証人と一緒に内容を確認して無事に完成したのでした。
ポイント
今回は揉めないようにとの想いが強く、相続争いを避ける内容を考えた事例でした。
今回のケースで最も揉める要因であろう相続税に関してはしっかりと事前に税理士と打ち合わせ金額の内容をシミュレーションしました。
何も対策をしなければ不動産だけを貰っても現金がなくて払えなくなるという事態になりかねません。
そういった内容も加味して遺言の内容を考えました。
そして相続税対策は時間がかかります。
今回は時間がなかったので大きな対策はできませんでしたが、時間があれば出来る対策はいくつかあります。
例えば暦年贈与や不動産の修繕や借入れなどです。
生前対策は、①節税対策②遺産分割(揉めない)対策③相続税対策とありますが、今回はすべてを考えた事例でした。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
江邉 慶子
- 保有資格
司法書士 相続アドバイザー 2級FP技能士 行政書士 宅建士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 家族信託
- 経歴
大学卒業後、不動産会社に勤務。自身の祖父の相続経験から「相続争いになる人を減らしたい」という想いがあり司法書士試験にチャレンジし、合格。平成27年7月から「司法書士法人C-first」に入所。入所時から相続を担当し、相談件数400件以上。セミナー講師も務め、生前対策の大切さを伝える。