様々な問題をみんなで力を合わせて解決したケース
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相続登記
登場人物
相談者
Aさん
被相続人
Bさん
相続人
Cさん
Dさん
他9名
その他
Dさんの娘
Dさんの娘の夫
Dさんの後見人
相談内容
「すでにお亡くなりのBさんの土地がウチの自宅の土地を覆うように塞いでしまっている。」とAさんが相談に来られました。
3年前にAさんの妻が他界し、その相続手続きを進めている途中見知らぬ土地が見つかったとの事でした。
図面を見ると確かに自分の土地と道路を分断するような位置に細長い土地がありました。
この土地の所有者はBさんですでに他界していましたが偶然にもAさんはその相続人の一人であるBさんの孫(Cさん)と知り合いでした。
AさんはCさんに連絡をとり事情を話したところ、Cさんは土地をAさんに売ることに快諾してくれました。
しかし売却までには二つの問題を解決する必要があります。
相続登記
Bさんが亡くなってから相続登記がされていませんでした。
相続登記をするにはBさんの相続人にあたる人物を調査し、全員に連絡を取って遺産分割協議か相続放棄をしてもらう必要があります。
地目変更
この土地は市街化調整区域内の田んぼでした。
田んぼは農地のため農協が許可を与えた農家にしか売る事ができません。
こういった場合は地目を宅地に変更してから売却するのが一般的ですが、市街化調整区域内で農地を宅地に変更する事は基本的には出来ません。
これらの手続きが必要な事をAさんとCさんに伝えて手続きに取り掛かりました。
解決までの流れ
戸籍を取り寄せて内容を確認すると相続人は11人いる事がわかりました。
Bさんが亡くなってからかなりの年月が経っていますのでその中には相続放棄した人がいるかもしれませんのでそれを調べます。
相続放棄の有無は裁判所で照会できますがそれが出来るのは相続人と利害関係人(債権者等)のみです。
なので照会に必要な書類を全てこちらで準備して最後は相続人であるCさんに協力してもらい照会して頂いたところ2人が相続放棄を終えている事がわかりました。
残り9人に事情を説明する手紙を送ったところ8人と連絡が取れ、Cさんの尽力もあり8人全員に相続放棄して頂ける事になりました。
しかし一人の相続人(Dさん)に手紙が届かず、連絡が取れないため手続きが止まってしまいました。
しばらくしたある日、Dさんの娘の夫から連絡が入ります。
相続人の一人が認知症
話を伺うと「Dさんは今、特別養護老人ホームに入所している。協力したいが本人が認知症になっていて印鑑証明が用意できない。」との事でした。
こうなってしまうと成年後見制度を利用せざるを得ません。
私達はDさんの家族に成年後見制度を説明しました。
裁判所の選んだ後見人がDさんの財産を管理する事、後見人には報酬を支払う必要があること、手続きを始めてから後見人が決まるまで3ヶ月~6ヶ月ほどの時間がかかる事など。
説明させて頂いた事の中にはデメリットも多かったのですがDさんの家族は快諾してくださいました。
AさんとCさんに事情と時間がかかる旨を説明して後見人の申立に取り掛かりました。
申立書に記入し必要書類を準備し、診断書や面接などを経て裁判所から審判が下り、後見の登記を終えるとよやく後見人が仕事を開始する事ができます。
後見制度の準備に取り掛かってから後見の開始まで約3ヶ月かかりましたが無事に後見人が選任され連絡を取り合う事ができました。
後見人と打ち合わせた結果、Dさんの代わりに相続放棄を行ってくれる事になりました。
しかし、後見人が相続放棄をするのは簡単ではありません。
後見人は被後見人の利益を守る責任があるので法定相続分を確保しなければなりません。
今回のケースでは土地の権利を受け取るか、それに見合った金額を受け取ることがDさんの利益を確保する事になります。
それをせずに相続放棄をするのであれば裁判所に許可を取る必要があります。
今回の土地の評価額は20万円程度でDさんの取り分で言えば3万円程度しかありません。
金額が少額だったので、裁判所に相談したところ、相続放棄しても問題ないとの回答でだったので無事に許可が下りて後見人の方の協力のもと相続放棄して頂く事ができました。
そして市街化調整区域の農地である問題ですが。
地目の変更は司法書士ではなく土地家屋調査士の業務になります。
幸いな事にAさんの兄弟に家族に土地家屋調査士の方がいました。
市街化調整区域であっても自治体に申請すれば認められる場合があり、土地家屋調査士が市役所に足を運び丁寧に事情を説明したことで地目の変更が認められました。
これで相続人全員に相続放棄していただけ、地目の問題も解決したので相続登記の準備が整いました。
当初は売却する予定であった土地ですが金額が少額だったため贈与という形でCさんからAさんに譲り渡す事となったので私どもは書類を整えて一旦Cさんに相続登記をし、Aさんに贈与登記をする手続きを法務局で行い無事に解決したのでした。
まとめ
今回は誰かが得をするという取引ではありませんでした。
Aさんの問題を解決するためにCさんとその親戚の方々やAさんの兄弟など登場人物の全員が問題の解決に積極的に動いてくれました。
これほどスムーズに進んだ相続でも相続人の数が多く、認知症の方がいらっしゃるなどがあり相続手続きを終えるには長い時間がかかってしまいました。
相続人が増えてしまうと全員が協力的であってもその手続きは複雑化し時間もコストもかかる事態となってしまいます。
また相続人の中に協力的でない方がいらっしゃるとその手間と費用はより増えてしまう事になります。
今後は相続義務化の事もあるので相続がまだの物件が見つかれば速やかに登記手続きを行うようにしましょう。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
山﨑 聡
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士 宅建
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 成年後見
- 経歴
若くして、すでに業界歴11年を超える大ベテラン。相続をはじめ成年後見、遺言などあらゆる手続きに精通する生前対策のスペシャリスト。