30年疎遠の兄の相続放棄をしたケース
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相続放棄サポート
登場人物
被相続人
Aさんの兄
相続人
第一順位
Aさんの兄の子2名
第二順位
Aさんの両親
第三順位
Aさん
相談内容
「去年亡くなった兄の相続放棄をしたい。相続放棄の期間が過ぎているが、間に合うのか教えて欲しい。」とAさんが相談に来られました。
お話を伺うと、Aさんは兄とは疎遠で30年程で全く連絡を取っていませんでした。
ある日、突然Aさんの元に遠方の市役所から手紙が届きます。そこには半年ほど前に兄が亡くなったことと兄の遺骨を引き取って欲しい旨が書かれていました。
Aさんとしては30年も疎遠で全く連絡もなく何もわからないので、遺骨を引き取らない旨を記載し返送しました。
また、兄には離婚済みの配偶者がいたのですが、その配偶者との間には2人の子供がいました。Aさんとしては、相続人はその2人なので自分がする手続きはないと考えていました。
ところが、その3か月後、今度は税務署から手紙が届きます。そこには兄が滞納していた国税を相続人であるAさんに支払って欲しいという内容でした。突然の内容にAさんは驚いて急いで税務署に電話をかけて担当者に兄には息子子どもが2人いることを伝えました。
すると、担当者からはその2人はすでに相続放棄をしていることを告げられたのです。
そういった経緯があり、シーファースト相続相談窓口を訪れてくださったのでした。
熟慮期間の起算日
Aさんが気になさっているのは相続放棄の熟慮期間です。
相続放棄は3ヶ月の熟慮期間があり、これを過ぎると相続放棄が認められなくなってしまいます。
今回は兄が亡くなってから約9カ月もの物月日が経過していました。
しかし、この3ヶ月の起算日は民法には以下のように記されています。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」
今回のケースでいうと、Aさんが自分が相続人であることを知ったのは、税務署に電話をして兄の子供二人が相続放棄をしたことを知った時です。
Aさんは、税務署とのやり取りのあとすぐにシーファースト相続相談窓口を訪れてくださいましたので、熟慮期間内に相続放棄を申述するには十分な猶予があります。
そのことをお伝えすると、「安心しました。突然よくわからない手紙が来て、普段相続手続きなどすることがないので不安でしたが、肩の荷が下りました。」とおっしゃってくださり、相続放棄の手続きを受任させていただくこととなりました。
解決までの流れ
相続放棄は、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地の家庭裁判所で行います。Aさんの兄は遠方で亡くなったため、管轄の家庭裁判所も遠方にあります。そのため、必要な書類を集めて郵送でやり取りすることになります。
今回のケースでの申立てに必要な書類は以下の通りです。
・相続放棄の申述書
・Aさんの戸籍謄本
・兄の出生から死亡までの戸籍謄本と戸籍の附票(又は住民票の除票)
・第二順位の相続人(Aさんの両親、祖父母)の死亡がわかる戸籍謄本
第二順位の相続人とは、被相続人の両親や祖父母のことを指します。両親と祖父母はすでに亡くなっていましたが、もしご存命であれば相続人はAさんではなく、ご両親又は祖父母でした。
また、今回は第一順位の相続人(兄の子)の戸籍を添付する必要はありません。兄の子は相続放棄済みで、家庭裁判所に相続放棄の申述書と添付書類を提出済みであるため、家庭裁判所はそのことを把握しており、書類を受け取っています。
また、3ヶ月を超えて相続放棄をする場合は事情説明書という書類を添付する必要がありますが、今回は3ヶ月を超えていないため、これも不要です。
これらの書類を郵送で集め、全て綴り、家庭裁判所に郵送しました。
相続放棄にあたって、他の相続人とやり取りをする必要はなく、スムーズに手続きを行うことができました。
まとめ
今回、Aさんは税務署からの手紙が届いた時点で放棄をしようと素早く決断したのが功を奏しました。
手紙が来ても放置する人も多いですがそうすると相続放棄が間に合わなくなってしまって追徴課税という事態にもなりかねません。
また兄の財産に全く手を付けていかなかったのも良かった事の一つです。
財産に手を付けると相続放棄ができない理由になります。
相続放棄をするのであれば財産には手を付けず、迅速に放棄の手続きを取りましょう。
そして放棄できるか出来ないか判断が難しい場合はぜひお近くの専門家にご相談ください。
この記事を担当した専門家
司法書士法人C-first
司法書士
石田 真由
- 保有資格
司法書士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策
- 経歴
大学在学中に民法の面白さにはまり司法書士を目指す。司法書士試験合格後は、複数の事務所で司法書士業務全般に携わる。C-firstに入所後は、主に相続や、生前対策分野を担当し、依頼者に貢献できるよう、日々研鑽している。